個人事業主が負担すべき使用人の退職金は、法人の損金に算入できませんので、個人事業を廃止した年か、前年分の事業所得の必要経費に算入します。
また、事業専従者の退職金は、法人の損金にも算入できませんが、個人事業の必要経費にも算入できません。
ここで、法人の方の使用人分についてはどうなるのかですが、個人事業主が法人成りした後に、個人事業当時の使用人に退職金を支払った場合は、個人事業主が負担する分と法人が負担する分を分けて、法人が負担する分については、退職した事業年度の損金に算入するのが原則です。
ただし、その退職が法人が設立されてから相当の期間を経過した後にされた場合は、退職金の全額を法人の損金に算入することになっています。
ここでいう相当の期間とは、減額更正との関連で、おおむね5年程度と解されています。
また、法人の方の事業専従者分についてですが、事業専従者だった方の退職金のうち個人事業当時の分は、たとえ法人が設立されてから相当の期間経過していても、法人の損金に算入することはできません。
さらに、個人事業の方の使用人分についてですが、法人が支払った退職金のうち、個人事業主が負担すべきものなので、法人の損金には算入されなかった金額は、事業主が支払った退職金とされます。
どのような手続をすればよいのかについて、この場合は、法人が退職金を支払った日の翌日から2ヵ月以内に所得税の更正の請求ができます。これによって、事業を廃止した年の分※か、その前年分の所得税の減額を求めることができます。
※この年に総収入金額がなかった場合には、総収入金額があった最近の年の分になります。
最後に個人事業の方の事業専従者分についてはどうかというと、個人事業主が事業専従者に支払った退職金は、事業所得の必要経費にできないことになっていますので、更正の請求もできません。
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